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渡部 豪; 雑賀 敦; 浅森 浩一; 島田 顕臣; 梅田 浩司*
no journal, ,
近年、GPS観測に基づく地殻の変位速度場から、九州地方南部にせん断ひずみ速度の大きな領域が存在することが指摘されているが、この変動に対応する活断層は認められていない。本研究では、同領域の地殻変動を詳細に推定するため、平成28年2-3月に10点のGNSS稠密観測網での観測を開始した。しかし、観測開始より約一か月後の2016年4月に熊本地震が発生し、稠密観測点でも地震時のステップや余効変動が捉えられた。せん断帯周辺の定常的な運動像を得るには、この地震の余効変動を推定・除去した上で地殻変動の議論を行う必要がある。そこで、同観測網で得られた変位速度に対し、熊本地震の粘性緩和と桜島の火山性変動を補正し、せん断帯に平行な方向の速度プロファイルを求めた。その結果、熊本地震前後で地殻変動パターンがよく一致することが明らかになった。これは、せん断帯の定常的な変動が熊本地震の発生の有無によらず継続していることを示しており、せん断帯の地下深部における定常的な断層すべりの存在を示唆する。